中学1年生だった頃の話〔昭和43年〕 これは 僕の友人から聞いた話です。 僕の通っていた中学校では 昼食はお母さんの作った弁当を 各自持っていった。 現代の弁当箱は カラフルなプラスチックのケースですが 我々の頃はアルミ製のギンギン色した 長四角の箱であった。 そういえば何故か みんな 男も女もフタでおかずを隠しながら 食べていたことを覚えている。 さて T君という ひょうきんな男がいた。 T君はその日弁当を食べてから お腹の調子が悪くなった。 午後の授業はお腹の痛みを こらえながらうけていたそうだ。 しかし、彼は先生に 「トイレに行かせてください。」 と言うのが 恥ずかしかったので 我慢していたそうだ。 でも 我慢は限界だった。 先生にも級友にも何も言わずに 突然教室から走り出たそうだ。 教室からトイレまで30メートル位ある。 そして、泣きそうな顔で教室へ戻って来た。 「間に合わなかった。」 T君のそばは さすがに臭かったと思う。 それからがT君だった。 汚れたンまるけのパンツを 空になった自分のアルミの 弁当箱に密封して詰め込んだ。 そして朝持ってきたように新聞紙で それを包んで家に持ち帰ったのだ。 その翌日、 T君はお腹の調子もよくなり 学校へやって来た。 昼食はみんなで弁当。 T君もみんなと同じように食べ始めた。 「T君の弁当箱は 昨日と同じ弁当箱だった。」 と 僕の友人は教えてくれた。 |
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